椎間板の修復・再生治療"DST法"の生物製剤フィブリンについて

 慢性腰痛や椎間板変性疾患は、様々な形で人生に影響を与えます。
また、この痛みを適切に緩和する方法を探すことは非常に難しいことです。
治療法の選択肢は様々ですが、その1つにフィブリンを使用した治療法があります。
FDA(アメリカ食品医薬品局)の認証を取得したこの物質を脊椎の椎間板に注入して、穴や亀裂を封じ込めることができます。
これにより、椎間板の漏れや過剰な腫れを防ぎます。また、慢性腰痛の症状を緩和し、軟部組織の回復を促進します。

フィブリンとは?

 体に怪我をして傷ができると、フィブリノーゲンとトロンビンと呼ばれる細胞が結合します。
フィブリノーゲンは血液中を高濃度で循環する糖タンパク質であり、トロンビンはフィブリノーゲンを活性化してフィブリンに変える酵素です。
傷害が起こると、フィブリノーゲンを活性化するため、トロンビンが体の部位にある傷の周辺に発生します。

この活性化された物質は、無数の長い棒状分子で構成され、その棒状分子がお互いに絡み合って複雑な網目を作ります。
この網目の特性は損傷した組織を囲んで、血液凝固などの傷の治癒を促進することです。このように自然に発生する組み合わせは体外でも複製ができ、外科目的に使用しようされています。
この生物物質は血流から分離され、活性化されてから ‘接着剤’に含まれるような物質(シーラント)を生成します。
シーラントはFDAでも認証されており、椎間板の損傷でできた穴を埋め、過剰な腫れを防ぎ、腰痛を軽減して傷の治癒を促進します。

椎間板の内部構造

 脊椎は体の中でも複雑な部分で、脊椎のねじれ、屈伸、伸張、左右への屈曲の役割を果たしています。各椎骨の間には椎間板があります。
この椎間板は、脊椎が決まった方向に動くときに脊椎を緩衝し、脊椎の運動性を維持する機能を持っています。
椎間板は運動性を担い、緩衝といったクッション効果も果たしているのです。

腰椎5箇所の椎間板は、それぞれ外側と内側で構成されています。髄核と呼ばれる内側には、タンパク質と水分子を含むゲル状の物質があり、タンパク質が漏れると周囲の組織に炎症が起こり、痛み、違和感が起こります。椎間板の外側である線維輪は硬い構造をしており、この丈夫な組織は脊柱を通る多くの神経と隣接しています。この線維輪にひびが入ると、内側のゲルが漏れ神経を圧迫し痛みが起こります。
椎間板は水分を保つことによって、脊椎に必要なクッション機能の役割をはたしています。しかし年齢とともに、細胞の機能が低下し、水分が少なくなると椎間板が乾燥し始め、骨と椎間板も崩れ始めます。また椎間板には血液が少ないため、治りにくいとされています。

椎間板の密封が必要な理由とは?

 椎間板は年齢とともに壊れ始めことがあるので、できるだけ椎間板の機能を維持することが重要です。
椎間板は修復と再生する際に大量の血液を必要としないため椎間板の組織にシーラントを使用することによって椎間板の変性を最小限に抑え、変性を遅らせる効果的な治療法です。
シーラントのような流体を挿入することで、椎間板の適切な形状を維持するために役立ち、この流体は構造的な支えとして椎間板の変性を防ぎます。

椎間板にフィブリンを使用するメリット

 シーラント=生物製剤フィブリンは椎間板に多くのメリットをもたらします。
治療中は、針を使用してシーラントを椎間板の内側と外側の両方に挿入することで治療ができます。

フィブリンは、線維輪の亀裂またはひびを埋めて脱出を防ぎ、脱出した液体によって引き起こされる腰痛を軽減するために作用します。
内側の層にはクッション機能が働き、腰への負担が軽減され、慢性的な痛みの軽減を可能にします。
また、フィブリンには全身の機能に対して治癒機能があるため、椎間板にも治癒効果があります。
組織の回復の促進、組織の結合を刺激すると非炎症性※1サイトカインが働くため、炎症を最小限に抑えることもできます。

まとめ

 米国では成人の4人に1人以上が腰痛に苦しみ、日常活動や生活の質に大きな影響を与えています。
慢性的な痛みを治療することは難しいと思われていますが、フィブリンは多くの人々にとって非常に良い治療法になると考えています。
フィブリノーゲンとトロンビンを利用したフィブリンは、椎間板の強度と機能を維持することに効果的で、それは椎間板内の水分を保つことにもつながります。
また内部の液体が漏れることを防ぎ、炎症と痛みを減少させます。慢性腰痛や椎間板変性症に苦しんでいる方にとって、この低侵襲治療が最適な治療法になることを願っています。

ケビン・パウザ医師のDST治療ブログより翻訳・引用
https://discseel.com/biologic-fibrin-used-to-advance-healing-of-damaged-spinal-tissue/ 

※1サイトカイン:細胞から分泌されるタンパク質であり、細胞間相互作用に関与する生理活性物質の総称です。
研究.netより引用
http://www.kenq.net/dic/110.html